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5)生理学的変化の計測
動揺暴露実験においては、被験者の脳波、心電図、呼吸、発汗、顔面温度分布、表情の計測は71名の被験者に対して行われたが、解析可能なデータとしては65名分のデータが得られた。
a)脳波の計測
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脳波の計測の目的は、乗り物酔いの発症過程における心理作用の関与を客観的に把握することを目的としている。即ち、酔いの発症過程のおいて外的刺激のある部分は神経機構を通じて大脳皮質の到達し、この刺激がもとになって心理的な効果を生み出すことが考えられる。乗り物酔いの発症過程における心理的反応とは、吐き気、悪心、めまい感、眠気、頭痛、嫌悪感、不安感等を指し、大脳皮質において内的・外的刺激信号が処理されることによって誘発される。覚醒時の脳波の大部分は大脳皮質における誘発電位と考えて良いから、この誘発電位を脳を覆う頭皮上で計測し、動揺刺激による心理的反応と脳波の特性の関係を求めることが必要である。
このような脳波の計測は臨床医学の分野ではあまり行われることはないであろうが、乗り物酔いが非目常的な外的刺激に暴露されたときの人間の生理的、心理的な正常反応であると理解するときには,脳における刺激信号処理の過程を知ることの意味は大きいと考えられる。

 

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脳波の計測には32チャンネルの脳波計(EEG−2100;(写真2.2.3−1参照)が用いられた。計測方法は、単極誘導法で、基準電極を両耳朶に置き、額を接地とする方法である。電極には、皿電極を用い、電極の頭皮上の貼り付けは国際式10−20法により行われた。単極誘導法による配線、国際式10−20法による頭皮上電極貼付位置を図2.2.3-10に示す。
脳波の計測は被験者が動揺模擬装置に搭乗し着席した状態で、動揺刺激暴露開始直前に閉眼安静状態、開眼安静状態でそれぞれ1分間の計測を行い、引き続き計測を続け、動揺刺激暴露状態で30分間、更に動揺暴露終了直後の開眼安静,閉眼安静状態でそれぞれ1分間計測された。写真2.2.3−2は、脳波計測、心電図計測の電極を取り付けた動揺暴露実験時の被験者の状況である。
脳波計測の状態は、チャンネル数:22、サンプリングレート:200Hz(or 500Hz)で動揺暴露前から終了後にかけて通常約35-40分間行われる。

 

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動揺暴露中の被験者はキャビンの動揺にともなって姿勢が変化し、体躯、頭部が動く。また、瞬き、欠伸、眼振、歯を噛み合わせる等の動きがあるため、これらの影響が筋電位として脳波に混入し、解析上困難が発生する。解析上の困難を避けるために、予め、体の動き、頭部の動きなどによる脳波への雑音の混入について予備実験を行った。図2.2.3−1に一例を示す。図は計測された脳波電位をスペクトル解析し、その結果を用いた誘発電位の平均パワートポグラフィーであり、各々の状態は、上段左からθ波(4−8Hz)、α波(8−10Hz)、α波(10−13Hz)、下段左からβ波(13−20Hz)、β波(20−30Hz)および高周波成分(30−100Hz)を表している。図より、わずかな体動、筋肉の収斂等が脳からの誘発電位に混入して正しい計測を妨げることが分かる。
予備実験結果を総合すると、姿勢や体動による影響として以下のように言うことができる。

 

 

 

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